「人身事故」と「物損事故」とはどのような違いがありますか。

交通事故で人間の身体・生命に損害が発生した場合を「人身事故」といいます。

交通事故でも人間の身体・生命に損害がおよばず、車や建物などの物に損害を与えた事故を「物損事故」といいます。

まず、金銭面での問題、つまり民事的な場面では、両者とも民法第709条の「不法行為」として、加害者が被害者に損害を賠償しなければならない点は共通しています。

しかしながら、人身事故の場合には、被害者保護のため「自動車損害賠償保障法」(自賠法)が適用されます。

この法律によって、次のような違いがでてきます。

(1)人身事故の場合には、自動車損害賠償責任保険にて最低限の補償は確保されますが、物損事故には自賠責保険の補償はなされません。

また、(2)物損事故の場合には、被害者が加害者の故意過失を証明する必要がありますが、人身事故の場合には、加害者が無過失を証明しない限り、被害者に対して賠償責任を負うこととされています。

さらに、(3)人身事故の場合には、加害車両の運転者のみならず、運行供用者(たとえば自動車の所有者など)にも損害賠償請求が可能とされています。

このように人身事故の場合には、自賠法により被害者の救済の範囲が拡大されているのです。

また、請求できる損害範囲についても違いがあります。

人身事故の場合には、被害者は主に入院・通院日数を基準に精神的苦痛に対する賠償(慰謝料)を求めることができます。

しかし、物損事故の場合には、原則として慰謝料の請求はできません。

買ったばかりの新車を事故で傷つけられても、慰謝料を請求することは原則としてできないのです。

次に、刑罰の話、つまり刑事的な場面での違いはあるのでしょうか。

人身事故の場合、自動車運転過失致死傷罪や危険運転過失致死傷罪の適用があります。

しかし、物損事故の場合、重大な過失で建物を壊した場合(道路交通法116条)以外には、過失で物を壊したことで罪に問われることはないという違いがあります(飲酒運転などは別です)。

なお、人身事故でも物損事故でも、発生した場合には道路交通法上、警察に通報する義務がありますので、くれぐれも怠らないように注意してください。


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