人身傷害保険の保険事故と被保険者は?家族契約の任意自動車保険は利用できる?

人身傷害保険とは、被保険者が自動車事故により、契約の自動車に乗車中の方が死傷した場合に、保険金額の範囲内で、保険約款に定める基準・計算方法に基づいて計算された損害額を、過失相殺による減額をせずに、被保険者自身が契約している保険会社から保険金を受け取ることができる保険です。

人身傷害保険(「人身傷害補償保険」という名称で販売されている場合もあります。)は、相手がいる事故か単独事故かを問わず、保険金額の範囲内で、保険約款に定める基準・計算方法に基づいて計算された損害額(治療費、休業損害など)を支払う(実損払いの)傷害保険です。

この損害額は、一般に加害者に損害賠償請求した場合に認められる損害額よりも低額です。

一般的には、記名被保険者だけではなくその配偶者や同居の親族等も被保険者の範囲に含まれるため、自身の配偶者や同居の親族等が人身傷害保険を契約していないかどうかを確認する必要があります。

但し、人身傷害保険は各保険商品によって約款が異なり、被保険自動車に搭乗中の亊故に限定して補償している場合もありますので、約款の確認が必要です。

保険事故と被保険者は?

従前、人身傷害保険に加入していれば、被保険自動車の搭乗中の事故はもちろん、他の自動車に搭乗申の事故でも、歩行中・自転車搭乗中の自動車との事故でも補償され、また、被害者白身が記名被保険者に該当しなくても、記名被保険者の一定範囲内の家族であれば、被保険者となるという約款が多数でした。

すなわち、従来型の人身傷害保険における保険者(保険会社)の給付義務を具体化させる保険事故及び被保険者の一例は以下のとおりです(約款によって異なります。)。

保険事故は、

①被保険自動車・他の自動車の運行に起因する事故、

②被保険自動車・他の自動車の運行申の、飛来中若しくは落下中の他物との衝突、火災、爆発又は被保険自動車・他の自動車の落下(ただし、被保険者が被保険自動車・他の自動車に搭乗中に限る。)、です。

ただし、被保険者が他の自動車に搭乗中の場合には、他の自動車に一定の除外があります。すなわち、

①用途及び車種が、二輪自動車及び原動機付自転車である自動車(この除外事由が存在しない約款もあります。)、

②記名被保険者、その配偶者又は記名被保険者若しくはその配偶者の同居の親族が所有又は主として使用する自動車(「常時使用する自動車」としている約款もあります。)、

③被保険者の使用者の業務(家事を除く)のために搭乗中の、その使用者の所有する自動車、

④自動車取扱業者である被保険者が業務として受託している自動車、

は他の自動車から除外されます(他の自動車からの除外につき、保険金を支払わない場合(免責事由)として規定している約款もあります。)。

上記の保険事故の場合、被保険者は、①記名被保険者、②記名被保険者の配偶者、③記名被保険者又はその配偶者の同居の親族、④記名被保険者又はその配偶者の別居の未婚の子、⑤上記①~④以外の者で、被保険自動車の正規の乗車装置又は正規の乗車装置のある室内に搭乗中の者、⑥被保険自動車の保有者・運転者、ただし被保険自動車の運行に起因する事故により身体に傷害を被り、かつ、それによって生じた損害について自賠法3条に基づく損害賠償請求権が発生しない場合に限る、となります。

ただし、①~⑥につき極めて異常かつ危険な方法で被保険白勁車又は他の自動車に搭乗中の牲業務として自動車取扱業者が被保険自動車を受託している場合を含みません。

また、約款によってはさらに、⑦上記①から④以外の者で、①~④のいずれかに該当する者が自ら運転者として運転中の被保険自動車以外の自動車の正規の乗車装置又は正規の乗車装置のある室内に搭乗中の者、を含めているものもあります。

これに対し、近時、保険事故を被保険自動車の運行に起因する事故等に限定し、被保険者も被保険自動車の保有者、運転者及び搭乗者に限定した約款も増えています。

従来型でも限定型でも、特約によって保険事故及び被保険者の範囲を限定したり拡げたりすることができますから、どの保険商品であっても、希望する補償内容を選ぶことはできます。

また、記名被保険者が個人である場合には交通乗用具事故特約をつけることで、例えば自転車(自転車同士の事故、歩行者と自転車の事故)、電車、ベピーカー、航空胤船舶、エスカレーター等の事故でも補償を受けることができます。

人身傷害保険は人傷基準損害額に基づいて保険金が支払われますが、この損害額は、一般に公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部の『民事交通事故訴訟損害賠償算定基準』(赤い本)や公益財団法人日弁連交通事故相談センターの『交通事故損害額算定基準』(青本)に掲載されている損害基準より低額です。

例えば、赤い本では一家の支柱である被害者の死亡慰謝料額は2800万円ですが、人傷基準損害額は2000万円~2200万円程度です。

約款を確認する

例えば、対人賠償保険の場合は、各保険商品の約款はほぼ同じですから、被害者は加害者が加入している対人賠償保険の約款を確認することは少ないと思います。

しかし、人身傷害保険は、各保険商品ごとに約款が異なっており、今後もさらなる改訂が予想されます。

その違いは基本的な部分のみならず細部に及んでいますから、約款を確認することが極めて重要です。

 

この記事を書いた人:弁護士法人アルテ代表 弁護士 中西優一郎

東京大学法学部卒業。東京の外資系法律事務所に勤務し、渉外弁護士として、労働、コーポレート/M&A、ファイナンス等の企業法務に従事。
2012年に兵庫県尼崎市にて開業。2014年に法人化し、弁護士法人アルテの代表に就任。
交通事故の解決実績多数。脳・脊髄損傷等による重度後遺障害案件を多く取り扱っている。交通事故の被害者救済のため、医療機関等との連携を強化。事故直後より、後遺障害等級の認定、適正な賠償金の獲得まで、ワンストップでサポートしている。

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