搭乗者傷害保険は、交通事故でどう使えばいいのでしょうか?

搭乗者傷害保険は、交通事故でどう使えばいいのでしょうか?

搭乗者傷害保険は、保険加入車両に搭乗中の(現実に事故時に乗車していた)人が傷害を負ったときに、傷害を負った人に対して定額の保険金が支払われる傷害保険です。

「搭乗中」とは、乗車するために、手足をドアやステップにかけたりしたときから、降車のために車外に両足をつけるときまでの間を指すのが一般的です。

この記事では、搭乗者保険のポイントを詳しく解説します。

1.搭乗者傷害保険とは?

搭乗者傷害保険とは、被保険自動車に乗車中に死傷した場合に、死傷したすべての人に対してあらかじめ定めた額の保険金を支払う保険です。

搭乗者保険は、契約時に特定した自動車(以下「被保険自動車」といいます。)が事故にあったときに、その自動車に搭乗中の人すべてを被保険者とし、あらかじめ定めた額をそれぞれの人に支払う保険です。

過失割合の影響で支払われる保険金額が変動することはありません。

なお、「自動車に搭乗中の人」として補償の対象となるためには、被保険自動車の正規の乗車装置または当該装置のある室内(隔壁などにより通行できないように仕切られている場所を除きます。)に搭乗していたことが必要です。

また、極めて異常かつ危険な方法で搭乗していた場合(例えば、体を車の窓から外に出したまま乗り込んでいるような状態など)、業務として被保険自動車を受託している場合には補償の対象外となります。

2.搭乗者傷害保険の特徴は?

相手方の対人賠償保険から保険金(損害賠償金)が支払われる場合でも保険金が支払われます。

人身傷害保険、無保険車傷害保険、自損事故保険で対象となる事故の場合にも、それぞれの保険からの保険金支払いとは別に保険金が支払われます。

また、搭乗者傷害保険は、事故で怪我を負ったとき、診断が確定した時点で保険の請求ができ、受け取りも早くできます。

そのため、入院費や治療費に対しての一時金として保険金を活かすことができます。

実際に怪我をして治療を受けることになれば、とりあえず病院に対して治療費は支払わなければなりません。

その場合、早めに受け取ることができる搭乗者傷害保険は経済的な面で助けになります。

3.被保険者の範囲は?

契約の車に搭乗中の方。

契約の車に搭乗されている方であれば、契約者ご本人、家族、友人を問わず全員が補償の対象となります。

保険金は、搭乗されている方それぞれの人数分、1名につき保険金額を限度に支払われます。

4.保険金が支払われない場合は?

搭乗者傷害保険で、保険金が支払われない主な場合は、次のとおりです。

また、日射・熱射などによる障害、本人が症状を訴えているが医師による他覚所見のないものについても保険金は支払われません。

・ 被保険者の故意または重大な過失によって生じた傷害

・ 被保険者の自殺行為・犯罪行為・闘争行為によって生じた傷害

・ 被保険者の無免許運転、酒酔い運転、麻薬・シンナーなどを使用した運転によって生じた傷害

・ 戦争、内乱、暴動などの異常な事態によって生じた傷害

・ 地震・噴火またはこれらによる津波によって生じた傷害

・ 被保険自動車を競技、曲技もしくは試験のために使用すること、または被保険自動車を競技、曲技もしくは試験を行うことを目的とする場所において使用することによって生じた傷害

5.支払われる保険の種類は?

支払われる保険金の種類は、次のとおりです(例示であり、契約内容により異なります。)。

① 死亡保険金

事故発生の日から180日以内に死亡した場合

② 後遺障害保険金

事故発生の日から180日以内に後遺障害が生じた場合

 ア 重度後遺障害特別保険金

事故発生の日から180日以内に後遺障害が生じ、かつ、介護を必要とすると認められるとき

 イ 重度後遺障害介護費用保険金

事故発生の日から180日以内に後遺障害が生じ、かつ、介護を必要とすると認められるとき

③ 医療保険金

生活機能または業務能力が減少したり、失った場合で、医師の治療を要したとき

医療保険金の支払い方法には、

(a)入院・通院日数によって支払われる「日数払い」と、

(b)ケガの部位・症状に応じて支払われる「部位・症状別払い」

の2つの方法があります。

「部位・症状別払い」の場合は、ケガの部位・症状に応じて支払われるため、治療中であっても保険金を受け取ることができます。

これに対し、「日数払い」の場合は、入院・通院日数が確定した後でなければ支払われませんが、限度日数(180日)以内であれば実際に入院・通院した日数に対応する保険金が支払われます。

6.支払われる金額は?

搭乗者保険は、契約時に特定した自動車(以下「被保険自動車」といいます。)が事故にあったときに、その自動車に搭乗中の人すべてを被保険者とし、あらかじめ定めた額をそれぞれの人に支払う保険です。

契約内容により異なります。

7.人身傷害と搭乗者傷害の違い

人身傷害も搭乗者傷害も、自動車事故により、契約の車に搭乗中のご自身や同乗者の方が、

・ ケガをした場合

・ 死亡したり後遺障害を被った場合

に保険金が支払われる補償ですが、その金額の計算方法やカバーする補償の範囲が異なります。

人身傷害は、治療費や精神的損害などの「実際の損害額」が支払われます。

治療費の実費や精神的損害、休業損害など、実際にかかった費用や損害額を責任割合(過失割合)にかかわらず支払われます。

搭乗者傷害は、「あらかじめ決められた金額」が支払われます。

人身傷害保険は過失割合によることがなく、示談交渉が決着したかどうかにはかかわりません。

そのため、示談交渉の結果を待つことなく保険金の請求をすることが可能です。

但し、人身傷害保険は交通事故によって被った身体的・精神的損害の実際額が支払われる保険であるため、損害総額が確定した時点でないと保険金が支払われません。

実際の被害額がどれだけになるか総額を計算するのは時間がかかることもあり、日数を要することがあります。

他方、搭乗者傷害保険はあらかじめ入院日数に対していくらの保険金が支払われるか、症状や部位に応じた金額がどのくらいなのかが定められている保険です。

そのため、診断が確定した時点や入院日数が既定に達していると保険金を請求することができ、受け取ることもできます。

人身傷害保険は総損害額を確定するまでに多少の日数を必要としますが、搭乗者傷害保険は医師の診断に基づいた入院および通院の日数が既定を経過した時点(例えば5日以上など。契約により異なります。)でお支払いすることが可能であり、後者のほうが支払いのタイミングはスピーディだと言えます。

 

この記事を書いた人:弁護士法人アルテ代表 弁護士 中西優一郎

東京大学法学部卒業。東京の外資系法律事務所に勤務し、渉外弁護士として、労働、コーポレート/M&A、ファイナンス等の企業法務に従事。
2012年に兵庫県尼崎市にて開業。2014年に法人化し、弁護士法人アルテの代表に就任。
交通事故の解決実績多数。脳・脊髄損傷等による重度後遺障害案件を多く取り扱っている。交通事故の被害者救済のため、医療機関等との連携を強化。事故直後より、後遺障害等級の認定、適正な賠償金の獲得まで、ワンストップでサポートしている。


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