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交通事故による怪我で解雇された場合の損害賠償請求は?
交通事故による怪我が原因で会社を解雇された場合、その収入減も賠償請求できるのでしょうか。
被害者が、交通事故により受けた傷害のため働けなくなったことで、勤務先から退職又は被解雇された場合、事故時から退職又は解雇のときまでの賃金等の収入減は休業損害として認められる可能性があります。
その後、傷害の症状が固定するまでの間の収入減についても、事故との間に相当な因果関係が認められれば、賠償請求が認められる可能性があります。
この際、傷害の内容・程度、事故時からの傷害の回復状況、治療内容、再就職の難易、再就職に通常必要な期間等に応じて、相当な休業率を段階的に下げる例もあります。
なお、退職又は解雇と事故との間に相当因果関係の存在が立証されたとまではいえない場合でも、交通事故が退職又は解雇に何らかの影響を与えたことが否定できないような場合には、慰謝料算定の事情として斟酌される余地があるといわれています。
以下、詳細、ご説明します。
損害賠償が認められる範囲
交通事故により受けた損害又はその療養のための欠勤等を原因として、被害者が退職又は解雇された場合は、事故時から退職又は解雇の時までの賃金等の収入減が休業損害として認められます。
その後も、傷害の症状が固定するまでの間の収入減について、事故との間に相当因果関係が認められれば、賠償するとされています。
但し、傷害の内容・程度、事故時からの傷害の回復状況、治療内容等に応じて、逓減方式に基づいて退職等の時から症状固定時までの休業率を低減させることもあります(段階的に下げていく方式のことです。)。
また、再就職の難易や、再就職に必要な期間も考慮されます。
裁判例(東京地判平成14年5月28日)では、会社員(男性・21歳)につき、事故による欠勤を理由に解雇された場合に、昨今の経済情勢、雇用情勢に鑑みると、原告のような新卒以外の者の就職は必ずしも容易ではなく、傷害が治癒したからといって直ちに就職できるものではないとして、治癒後3ヶ月程度まで事故前給与を基礎に認めた事案があります。
解雇と事故との間に相当因果関係の存在が立証されたとまではいえない場合
退職又は解雇と事故との間に相当因果関係の存在が立証されたとまではいえない場合でも、交通事故が退職又は解雇に何らかの影響を与えたことが否定できないような場合には、慰謝料算定の事情として斟酌される余地があるといわれています。
裁判例(東京地判平成20年3月25日)では、給与所得者(男性・年齢不詳、14級10号)につき、職場復帰までの14日間は100%、その後症状固定までの間に運送会社を事故による受傷と相当因果関係のない解雇により退職したが、受傷により運転手として職務に支障を来したことは否定できない上、事故に遭わなければ事故後症状固定まで就労を継続していた高度の蓋然性が認められるとして、症状固定までの就労継続を前提とした上、受傷の部位・程度、治療経過、症状の推移等を考慮し、234日間平均50%を休業損害として認めた事案があります。
交通事故による怪我で就職が遅れた場合は?
それでは、上記の例とは別に、交通事故による怪我が原因で就職が遅れた場合は、その損害を請求できるのでしょうか。
例えば、大学2年生のときに交通事故で大ケガをし、再手術などで治療が長引き、2年間休学したうえ今度ようやく学校に戻ることができましたが、その結果、人よりも2年遅れて卒業し、就職することになる場合などです。
この場合、遅延した期間の逸失利益が認められます。
大学生などが交通事故で長期の療養を余儀なくされ、一定期間休学したような場合、様々な問題が生じます。
無駄になった授業料や、現にアルバイト中の者がアルバイトできなくなったことによる休業損害などは、当然事故による損害として加害者に請求できます。
しかし、それよりも大学の卒業が遅れ、したがって就職の時期もそれだけずれてしまうということが被害者にとって大きな問題です。
つまり、本来事故に遭わなければ通常の年限で卒業し就職できたのに事故のためその時期が1年なり2年なり遅れてしまったとすれば、その期間働く機会を奪われたことになり、得べかりし利益を失ったことになります。
この損害は、判例でも事故との相当因果関係を認め、就職が遅延した期間について、賃金センサスの歳ないし24歳の大学卒労働者平均賃金を基準にした逸失利益が認められています。
交通事故で弁護士に依頼したほうが良い場合は?
交通事故の損害賠償額の算定には、以下の通り3つの基準があります。
(1)自賠責基準
強制保険である自賠責保険により支払われる金額の算定根拠となる支払の基準です。
(2)任意保険基準
保険会社が被害者に提示してくる金額の算定基準です。
(3)裁判基準(弁護士基準)
過去の裁判例をもとに、裁判所が妥当と考える損害賠償金額を類型化した基準です。
上の3つの基準の関係は(1)<(2)<(3)となっており、裁判基準(弁護士基準)になるほど損害賠償額は高額に設定されています。
弁護士に依頼していないケースでは、保険会社は、(1)自賠責基準か(2)任意保険基準の額で提示してきます。
(3)裁判基準(弁護士基準)で提案してくることはほとんどありません。
後遺障害が残る交通事故事案では、弁護士に依頼したほうが、(3)裁判基準(弁護士基準)で算出しますので、賠償額を多く得られますし、弁護士に依頼しない場合との差額は数百万円から数千万円になることがあります。
この傾向は、後遺障害が重くなればなるほど強くなり、死亡案件でも同様です。
また、弁護士に依頼すると、ご自身が保険会社との交渉をしなくて済みますので、保険会社への対応を全て弁護士に任せることができ、精神的な負担が減るというメリットもあります。
弁護士費用特約に加入されている場合は、一定の額まで弁護士費用を負担せずに、(3)裁判基準(弁護士基準)で算出した損害賠償金を得られるので、弁護士に依頼したほうがよいでしょう。
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