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年金に死亡逸失利益は認められるか?
年金受給者が交通事故で死亡した場合、死亡逸失利益の算定はどのようにするのでしょうか。
死亡逸失利益の算定式は、(基礎収入)×(1-生活費控除率)×ライプニッツ係数 です。
各種年金の逸失利益性は、以下です。
国民年金
普通恩給と国民年金の逸失利益性が争われた事案で最高裁平成5年判決は、普通恩給は、受給権者に対して損失補償ないし生活保障を与えることを目的とするとともに、その者の収入に生計を依存している家族に対する関係においても同一の機能を営むものと認められるとの理由で昭和41年判決を引用して、その逸失利益性を肯定しました。
そのうえで、同判決は、国民年金(老齢年金)はその目的・趣旨が普通恩給と同じであるとの理由でその逸失利益性を肯定しました。
障害年金
障害年金については、身体障害の存在という特別な事情のある場合に支給される点で異なるためにその判決が注目されていました。
最高裁平成11年判決は、障害基礎年金と障害厚生年金について、保険料が拠出されたことに基づく給付であることを理由に逸失利益性を肯定しました。
しかし、受給者に子と配偶者があることに基づき加給されていた分については、拠出された保険料と年金給付との間に対価関係がなく、受給権者の婚姻や死亡などによって受給権の喪失が予定されておりその存続が確実でないとして逸失利益性を否定しています。
遺族年金
平成5年判決の後も遺族年金については他の年金と性質を異にするとして、下級審ではその逸失利益性を否定する判決の方が肯定する判決よりも多数現れていました。
そのような状況で最高裁は平成12年に2つの判決で遺族厚生年金と軍人恩給の扶助料について、それぞれ逸失利益性を否定しました。
遺族厚生年金については、専ら受給権者自身の生計の維持を目的とした給付という性格を有し、受給権者自身が保険料を拠出しておらず、給付と保険料とのけん連性が間接的であるところからして、社会保障的性格の強い給付といえ、また受給権者の結婚、養子縁組など本人の意思により決定し得る事由により受給権が消滅するのでその存続が必ずしも確実とはいえないという理由で否定しています。