無許可営業で収入を得ていた者の逸失利益は?

許認可が必要な事業で許認可無しで事業を営んでいる者が交通事故で死亡した場合、死亡逸失利益の算定はどのようにするのでしょうか。

死亡逸失利益の算定式は、(基礎収入)×(1-生活費控除率)×ライプニッツ係数 です。

被害者が現実に得ていた違法収入による賠償を法がそのまま認めれば、法自らが違法行為を認めることになってしまいます。

したがって詐欺や賭博といった犯罪による収入は基礎収入としては認められません。

しかし、違法といっても程度の差があり、単なる業界の秩序維持のための行政上の取締規制違反にすぎないような場合には、現実収入をもとに逸失利益が算定されることもあります。

この点、以下の裁判例が参考になります。

◎ 最一小判昭39・10・29

交通事故の事案ではないですが、自動車の運送事業免許を得ていなかった買主が、売主の履行遅滞のため自動車を運送事業の用に供することができなかったとして、得べかりし営業利益の喪失損害を請求した事案です。

最判は、事業経営の過程で締結すべき各個の契約は私法上無効ではなく、これにより運賃債権を取得し得べきものであるから、運賃債権取得の機会を喪失したことは損害にあたり、買主が当該運送事業の免許(道路運送車両法4条)を得ていないことよって否定されるものではないとしました。

◎ 東京地判昭45・4・10

休業損害の例ですが、運送会社に勤めた後独立して運送業の下請をはじめた被害者が、道路運送車両法上の事業免許を受けていなかったケースで、上記昭和39年最判と同様の理由のほか「道路運送法第4条1項の事業免許制の根本趣旨は、事業の公共性に鑑み、輸送秩序の維持と不当競争の防止を図ることにあり、事業による営利自体を直接規制しようとするものではないから、原告の無免許営業を目して当然反道徳的な醜悪な行為ということはできないし、その違法性は微弱であって、その営利は法の保護に値しないものとはいえないと解する(大阪高判昭43・3・28参照)。したがって、原則的には無免許運送事業者の逸失利益は肯定すべきであるが、無免許の事実は収益の確実性、永続性の点において免許を受けている者に比べ低いものと解すべきであるので、逸失利益の算定にあたりこの点を考慮されねばならないと解する。」とした上で、若干減額した範囲で休業損害を認めました。

◎ 東京地判平4・7・16

事故時28歳の特殊浴場ホステスが14級の神経障害の後遺障害を負った事案について、事故当時勤労意欲のある健康な女性であったことからすれば固定までの期間少なくとも賃セ学歴計女性年齢別の平均給与程度の収入は得られたであろうと推認されるとして休業損害及び後遺障害逸失利益(ただし14級後遺障害にもとづく労働能力喪失期間は3年とした。)を算定しました。

◎ 横浜地判平2・4・20

事故時特殊浴場ホステスとして1か月70万円の収入があったと認定しましたが、原告の職業の特殊性を考慮して、賃セ女子労働者34歳の平均賃金を基礎に休業損害を認めました。

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