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交通事故で死亡した被害者の内縁の妻の損害賠償
交通事故で死亡した被害者の内縁の妻は、逸失利益の損害賠償を請求できるのでしょうか。
内縁の妻も一定の範囲で逸失利益の賠償請求をすることができる場合があると考えられています。
この点、以下の最高裁の判例が参考になります(最三小判平5・4・6)。
事案の内容は?
ひき逃げ事件の被害者(62歳・男)には18年来の内縁の妻がいましたが、親も妻子もおらず、相続人は妹らのみでした。ただし、被害者本人は知的障害があり、内縁妻は耳が不自由であって、妹らは結婚式にも呼ばれなかったので内縁の事実を知らなかった等、事実認定自体にも相当争いのある事案でした。
本件は、内縁の妻から、政府に対して、自動車損害賠償保障事業に基づく損害のてん補金請求がなされ、政府がこれに対して、支払基準(当時は運輸省自動車局保障課長通達)に従い、損害てんぽ金として配偶者の相続分に相当する額を支払ったところ、妹らがその支払は無効であって自分らに支払われるべきであるとして国を相手に争った事案です。
なお、ひき逃げの場合には自動車の保有者が明らかではありませんから白賠法3条による損害賠償請求ができないため政府がその損害をてん補する事業を行っており、自賠法71条以下に定めがあります。
裁判所の判断は?
最高裁は、(1)内縁の妻は将来の被扶養利益を喪失したものでありこれを損害として保有者に対して賠償請求できるものであるから、てん補金の支払も正当であるとしました。
その上で、(2)内縁妻の扶養に要する費用は、死亡被害者の逸失利益から支出されるものであるから、相続人らに相続される死亡逸失利益から控除されるべきであるとして、上告を棄却ました。
本判決の上記(2)の射程については、最高裁はあくまで、政府保障事業によるてん補金支払の場面であること(保障額に上限がある(当時2000万円)、独自の支払基準に則って支払われる等の特殊性があること)や、相続人たる妹らが被害者に扶養される関係になかったことから、被扶養者の中に相続人と相続人以外の者が競合しているような場合にまでは射程が及んでいないという考えもあります。
また、相続人に死亡逸失利益が全額支払われてしまった後に被扶養者から請求があった場合にどうすべきかといった問題も残されているといわれています。