交通事故で医療記録を取寄せる方法は?

交通事故に遭った場合、怪我の治療で病院に通院することがあると思います。

そして、治療が終了して、相手方保険会社等と損害賠償金の交渉をする際、怪我の内容、程度に応じて賠償額が異なるため、診断書等の医療記録が必要となることがあります。

交通事故事案のうち人身被害が生じている事案では、被害者が受けたと主張する傷害の有無、内容、程度が問題となることが少なくありません。

人身事故事案において、傷害の有無、内容、程度の証拠資料としては、医療記録が重要です。

では、どのように医療記録を取寄せればいいのでしょうか。

怪我をした当事者ご本人が取寄せる場合は、ご本人が医療機関に申請することになります。

そして、弁護士に依頼している場合は、弁護士がご本人の同意書、委任状等を取得して、代理申請することがあります。

その他、場合によっては、弁護士が弁護士会照会、証拠保全、文書送付嘱託、文書提出命令などの手続きを用います。

以下、医療記録の取寄せの方法について、ご説明致します。

医療記録の取寄せ範囲は?

医療記録の種類としては、診療記録、看護記録、検査記録、手術記録、画像、診断書、診療情報提供書(紹介状)等、様々なものがあります。

また、医療記録が紙媒体で管理されている場合と電磁的記録として管理されている場合があります(電子カルテ)。

電子カルテの場合には、ディスクに複製したものを取り寄せることになります。

医療記録を取り寄せる場合には、基本的には全ての医療記録を取り寄せるべきです。

また、事案によっては既往症との関係が問題になることがあるため、事故前の医療記録を取り寄せる必要が出てくることもあります。

医療記録の取寄せ方法は?

患者本人の同意を得られる場合

医療記録の取寄せ方法ですが、①患者本人又は家族から医療機関に申請して開示してもらう方法、②依頼した弁護士から医療機関に申請して開示してもらう方法があります。

開示の申請を受ける医療機関からしてみれば患者の個人情報を第三者に開示することになりますので、基本的には上記①の方法をとるように要請してくることがあります。

但し、患者本人の同意があれば代理人による開示申請を認めるとの取扱いをしている医療機関もありますので、その場合には患者本人から同意書あるいは開示申請及び開示記録の受領に関する委任状を得て、弁護士が申請することになります。

患者本人の同意を得られない場合

患者が意識不明でその同意を得ることができない場合は、どうすればいいのでしょうか。

個人情報保護法23条1号は個人情報の第三者開示について法令に基づく場合を規定していますから、この規定に基づいて医療記録を取り寄せることになります。

具体的には、弁護士が、弁護士会照会(弁護士法23条の2)、証拠保全(民事訴訟法234条)、文書送付嘱託(同法226条)、文書提出命令(同法221条)を用いることになります。

弁護士が加害者側の代理人として医療記録の開示を求める場合にも、この方法を用いることになります。

医療記録の受取り方法及び費用

医療機関によっては、開示記録の郵送を不可としているところもあります。

そのような場合には、医療機関に行って開示記録を受領する必要があります。

また、医療記録の開示にはある程度の費用がかかりますので、費用について事前に確認しておく必要があります。

保険会社が保有している場合

なお、保険会社が医療機関に対して治療費を直接支払っている場合には、既に保険会社が医療記録を保有しています。

保険会社は患者から同意書を得て医療記録を入手しています。

この場合には保険会社に依頼して医療記録を入手することができます。

医療記録の必要性

全ての事案で医療記録が必要になるわけではありません。

例えば、軽微な事故であり、被害者本人が保有している診断書、診療報酬明細書等により把握できた人身被害の状況に関し、加害者側と見解の相違がないときは、医療記録を取り寄せる必要性は低く、費用を支払ってまで医療記録を取り寄せる意味がないこともあります。

もっとも、被害自体は軽微に見えても治療期間が長期にわたっているような場合には、治療の必要性、妥当性について加害者側から疑義を呈されることがあります。

従って、医療記録を取り寄せる必要性は事案によって個別具体的に判断する必要があります。

取寄せた医療記録の検討

取り寄せた医療記録の内容を理解することが難しい場合があります。

電子カルテが導入される前、医療記録は手書きでしたので、非常に判読しづらいということがよくありました。

この点は、電子カルテの場合には改善されています。

しかし、医療記録には医学の専門用語や略語が頻出しますので、内容を検討すると言っても難しい場合があります。

分からない点があった場合、主治医と連絡を取り、疑問を解消していくと良いでしょう。

弁護士に依頼している場合、医師との面談に同行して、医師より負傷の内容、程度、治療経緯等をヒアリングすることがあります。

医師は多忙ですので、弁護士より事前に質問を記載した照会状を送付した上で面談するなど、ポイントを絞って質問できるよう、準備することが多いです。

医師との信頼関係が重要です。

医師に後遺症診断書を作成してもらう際の注意点は?

後遺障害診断書は、医師によっては丁寧に細部まで書かれることもあれば、簡潔に書かれる場合もあります。

そのため、後遺障害診断書を受け取ってすぐに保険会社に渡してしまうと、診断書の内容によっては「障害なし」と認定されてしまう場合があります。

また、将来的に症状が悪化する可能性が書かれているかどうかで、逸失利益の年数制限が変わることもあります。

後遺障害に詳しい弁護士に確認してもらうほうがいいです。

また、後遺障害診断書を医師に作成してもらったり、加筆をしてもらう際に気をつけなければならないことがあります。

それは、医師があまり診断書の作成に積極的でない場合があることです。

診断書の作成は医療行為ではないことや、医師側からすれば治らなかった(完治しなかった)ことについて記載することになるからです。

交通事故被害者にとって、後遺障害診断書は重要な書類です。

しかし、医師から見れば治療ではなく書類作成に忙しい時間を裂かなければならないのです。

診断書は作成をお願いして作ってもらいます。

こちら側からお願いする、という立場なので無理を言うわけにはいきません。

かといって、作成してもらわなければ後遺障害の認定には不可欠です。

医師が忙しいことと、あまり関心を示さないこともあることを理解した上でお願いしましょう。

ただ、医師も様々な方がいますので、こちらが敬意を払っても治療先の医師が積極的でない場合には、早期に他の医療機関に診断を受けることをお薦めしています。

その結果、例えば可動域制限が大きく変わったり、神経損傷が検査によって明らかになったりして、認定等級が上がり、より多額の賠償を受けることができたという方が多くいらっしゃいます。

交通事故に遭い、後遺障害診断書の作成にお困りでしたら、まずは弁護士にお気軽にご相談ください。

この記事を書いた人:弁護士法人アルテ代表 弁護士 中西優一郎

東京大学法学部卒業。東京の外資系法律事務所に勤務し、渉外弁護士として、労働、コーポレート/M&A、ファイナンス等の企業法務に従事。
2012年に兵庫県尼崎市にて開業。2014年に法人化し、弁護士法人アルテの代表に就任。
交通事故の解決実績多数。脳・脊髄損傷等による重度後遺障害案件を多く取り扱っている。交通事故の被害者救済のため、医療機関等との連携を強化。事故直後より、後遺障害等級の認定、適正な賠償金の獲得まで、ワンストップでサポートしている。

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