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交通事故損害賠償の時効は?
交通事故の損害賠償債務の消滅時効は、どのように考えればよいのでしょうか。
交通事故による人身損害の消滅時効の起算点については、「損害及び加害者を知った時」の解釈が問題になります(民法724条)。
この点、大きくは、事故時とする見解、症状固定時とする見解に分かれています。
現在の実務では、人身損害の場合、傷害関係の損害については、傷害自体の治療が終了するか(傷害が治癒する)、症状固定となった時から時効が進行し、後遺障害関係の損害については症状固定した時から時効が進行するとの理解が一般的になってきているようです。
このように、症状固定若しくは治癒の時点から消滅時効が進行すると一応は考えられそうですが、被害者と加害者・保険会社側との間で見解の相違があり、加害者が主張する治癒、症状固定時と被害者が主張する治癒、症状固定時の判断が争われていた場合には注意が必要です。
具体的には、被害者が痛みを訴えて通院を繰り返しているが、医学的には治療効果が見られなくなっていたとして、治癒ないし固定したとして、時効が問題にされることがあります。
このような場合は、例えば、民事調停を申し立てておいて、加害者と話し合いの機会を持っておくことが必要な場合もあるかと思われます(民法151条)。
最判平成16・12・24
交通事故の時効に関しては、以下の裁判例が参考となります。
判例も、交通事故による後遺障害に基づく損害賠償請求権の消滅時効が遅くとも症状固定の診断を受けた時から進行するとしています。
この判例は、症状固定後に後遺障害等級が非該当から等級が認定された事案についても、以下のとおり判断しました。
「民法724条にいう『損害及ヒ加害者ヲ知リタル時』とは、被害者において、加害者に対する賠償請求をすることが事実上可能な状況の下に、それが可能な程度に損害及び加害者を知った時を意味し(最高裁昭和45年(オ)第628号同48年11月16日第二小法廷判決・民集27巻10号1374頁参照)、同条にいう被害者が損害を知った時とは、被害者が損害の発生を現実に認識した時をいうと解するのが相当である(最高裁平成8年(オ)第2607号同14年1月29日第三小法廷判決・民集56巻1号218頁参照)。」
「被上告人は、本件後遺障害につき、平成9年5月22日に症状固定という診断を受け、これに基づき後遺障害等級の事前認定を申請したというのであるから、被上告人は、遅くとも上記症状固定の診断を受けた時には、本件後遺障害の存在を現実に認識し、加害者に対する賠償請求をすることが事実上可能な状況の下に、それが可能な程度に損害の発生を知ったものというべきである。自算会による等級認定は、自動車損害賠償責任保険の保険金額を算定することを目的とする損害の査定にすぎず、被害者の加害者に対する損害賠償請求権の行使を何ら制約するものではないから、上記事前認定の結果が非該当であり、その後の異議申立てによって等級認定がされたという事情は、上記の結論を左右するものではない。」