交通事故の心因的要因による減額とは?

交通事故の心因的要因による減額とは、何でしょうか。

事故が起こり、被害者に発生した損害が事故と相当因果関係があるとしても、被害者に何らかの負の素因があるときは、この負の素因をもって、その損害額を減額することができるか検討します。

これが素因減額の問題といわれます。

なお、寄与度減額(減責)といわれることもあります。

素因減額が問題にされる場合として、一般的には、心因的要因による減額、既往症による減額などが挙げられています。

心因的要因がある場合の素因減額は?

心因的要因がある場合の素因減額の可否に関して、以下の裁判例が参考になります。

◎ 最判昭和63・4・21

事案は、被害者が、軽微な追突事故の2日後に病院に赴き、医師に対し、当初は何の異常もなかったが、暫くして気分が悪くなり、頭、頸に痛みがあり吐き気がする等と訴えて診察を受けたところ、医師から、外傷性頭頸部症候群として約50日の安静加療を必要とするとの診断で入院を勧められたため、即日入院し、その後、長期の入通院を10年以上続けたという事案です。

最判は、「被害者は、本件事故により頭頸部軟部組織に損傷を生じ外傷性頭頸部症候群の症状を発するに至ったが、被害者の特異な性格、初診医の安静加療約50日という常識はずれの診断に対する過剰な反応、本件事故前の(別件での)受傷及び損害賠償請求の経験、加害者の態度に対する不満等の心理的な要因によって外傷性神経症を引き起こし、更に長期の療養生活によりその症状が固定化した」「被害者の症状のうち頭頸部軟部組織の受傷による外傷性頭頸部症候群の症状」「その後の神経症に基づく症状について」、事故後3年までの「右各症状に起因して生じた損害については、本件事故との間に相当因果関係がある」が、「右症状のうちには被害者の特異な性格に起因する症状も多く、初診医の診断についても被害者の言動に誘発された一面があり、更に被害者の回復への自発的意欲の欠如等があいまって、適切さを欠く治療を継続させた結果、症状の悪化とその固定化を招いたと考えられ」、事故後3年間までに「被害者に生じた損害を全部加害者らに負担させることは公平の理念に照らし相当ではない。すなわち、右損害は本件事故のみによって通常発生する程度、範囲を超えているものということができ、かつ、その損害の拡大について被害者の心因的要因が寄与していることが明らかであるから、本件の損害賠償の額を定めるに当たっては、民法722条2項の過失相殺の規定を類推適用して、その損害の拡大に寄与した被害者の右事情を斟酌することができる」として、事故後3年までに発生した損害のうち4割を限度としました。

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