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無保険、ひき逃げの交通事故で政府保障事業とは?
無保険事故、ひき逃げ事故に遭った場合、どうすればいいのでしょうか。
例えば、交通事故でひき逃げに遭い、加害運転者が逃走して不明の場合、又は交通事故の加害車両に自賠責保険の契約が締結されていなかった場合などです。
このような場合、政府の保障事業を検討するといいでしょう。
政府の保障事業とは、自動車損害賠償保障法(自賠法)に基づいて、自賠責保険又は自賠責共済による救済の対象にならない「ひき逃げ事故」や「無保険事故」の被害者に対して、健康保険又は労災保険などの他の社会保険の給付や加害者(損害賠償責任者)からの支払いなどによってもなお損害が残る場合に、政府(国土交通省)が加害者に代わって損害相当額を立替払いする制度です。
政府保障事業とは
自賠責保険(共済)に加入していない自動車により亊故に遭った場合や、ひき逃げ事故の場合など、自賠責保険(共済)による損害賠償額の支払を受けられない被害者に対して、政府がその損害を填補する自賠法上の制度として、政府保障事業(自賠法71条以下)があります。
自動車損害賠償保障制度(自賠責制度)は、自動車への自賠責保険(共済)(自賠貴保険等)の加入を義務づけることにより、自動車事故の被害者救済を実現しようとしています。
ところが、無保険車による事故や、ひき逃げ事故(自動車の保有者が誰か不明である事故)あった被害者は、自賠責保険等から支払を受けることができません。
このような被害者を救済するために、政府の保障事業が行われています(自賠法71条以下)。政府の保障事業には、このような被害者に対する保障(自賠法72条1項前段)と、自賠責保険会社等に対する保障とがあります(自賠法72条2項)。
無保険事故
「無保険事故」とは、加害車両に有効な自賠貴保険(共済)の契約が締結されていなかった場合や、事故前に自賠責保険(共済)の期限が切れていた場合のように、本来自賠責保険(共済)がついているべきなのに、ついていない車が加害車両になった事故をいいます。
ひき逃げ事故
「ひき逃げ事故」とは、加害運転者が逃走して不明の場合の事故のことで、歩行者をひいて逃げた場合だけでなく、自動車同士が接触・衝突して被害者を負傷させたあと逃走した場合なども含みます。
自賠責保険(共済)と異なる点
政府の保障事業は、被害者が受けた損害を国(国土交通省)が加害者にかわっててん補(立替払い)する制度です。
支払限度額は自賠責保険(共済)と同じですが、次のような点が自賠責保険(共済)とは異なります。
・請求できるのは被害者のみです。加害者から請求はできません。
・被害者に支払った後、政府が加害者に求償します。
・健康保険、労災保険などの社会保険による給付額(給付を受けるべき額を含みます)があれば、その金額は差し引いて支払います。
なお、請求の窓口は保険会社(協同組合)ですので、詳細については保険会社(協同組合)にご確認下さい。
一部取扱いのない保険会社もあります。
保障の内容
支払(損害のてん補)の対象及び限度額
被害者が政府から支払(損害のてん補)を受けられる損害の対象及び限度額は、自賠責保険等と同じです。
すなわち、保障の対象となるのは人身事故のみであり、物損事故は対象となりません。
また、支払限度額は傷害に関して120万円、後遺障害に関してはその程度(等級)に応じて75万円から4000万円、死亡事故については3000万円です(自動車損害賠償法施行令20条)。
政府保障事業の特徴(自賠責保険金等の支払と異なる点)
政府保障事業は、他の制度によって救済されない被害者を保護するための最終的な制度であることから、自賠責保険金等の支払と比べ、その支払には次のような取扱いの違いがあります。
他の社会保険等による給付との調整
被害者が他の法令に基づく災害補償給付を受けることができる場合は、その限度で保障を受けることができまぜん(自賠法73条1項)。
政府保障事業の填補よりも先に給付を請求すべきとされているものには、労災保険給付、健康保険給付、介護保険給付などがあります(自動車損害賠償法施行令21条参照)。
損害賠償の場合と異なり、労災給付のうち年金部分については、既に支給を受けた額及び支給を受けることが確定した額だけでなく、確定していない将来給付分も控除されます。また、労災保険給付等の社会保険による給付は慰謝料を填補しないとするのが通説・判例の立場ですが保障事業の場合は給付を受けた全額について支払額から控除されます。
損害賠償との調整
無保険車の運転者等の損害賠償義務者から損害賠償金の支払を受けたときは、その限度で保障を受けることができません(自賠法73条2項)。
損害賠償義務者には、自賠法3条の賠償責任を負う本人と不真正連帯関係の損害賠償債務を負う者(加害者に対して使用者責任(民法715条1項)を負う者など)も含まれます。
被害者が損害賠償義務者から人身損害に関する支払を受けたときは、名目が何であれ、その限度で填補を受けられない(その額が控除される)のが原則です。
これに対して、物損に関する支払は、保障事業からの填補には影響しませんので、被害者が損害賠償の支払を受ける場合には、その趣旨を明確にするように注意してください。
保障金額(填補額)の算定方法
平成19年4月1日以降に発生した事故に対しては、自賠責保険の支払基準と同様の填補基準によって算定されます。
この填補基準により算定された「損害填補対象額」が「法定限度額」を超えない場合はその額から、超える場合は限度額から、社会保険による給付や損害賠償責任者からの支払額を控除した額が、被害者に支払われることになります。
親族間事故
親族間で加害者、被害者となった事故については、原則として損害の填補を行わないものとされています。
政府から加害者に対する求償(自賠法76条1項)が予定されているためです。
但し、親族間事故であっても、加害者が死亡し、被害者である遺族が加害者の相続について相続放棄(民法915条)をしているなど特段の事情がある場合には保障が行われます。
保障金の請求手続
被害者が政府保障事業から損害の填補を受けようとする場合には、保障事業を委託されている保険会社又は共済組合の窓口に備えつけられている「自動車損害賠償保障事業への損害填補請求書」に必要事項を記載し、必要書類を添付して請求をします。
必要書類は、自賠責保険等へ損害賠償額の請求をする際の必要書類と同様です(交通事故証明、診断書、休業損害証明書、後遺障害診断書など)。
詳細は、ご確認下さい。
この記事を書いた人:弁護士法人アルテ代表 弁護士 中西優一郎
東京大学法学部卒業。東京の外資系法律事務所に勤務し、渉外弁護士として、労働、コーポレート/M&A、ファイナンス等の企業法務に従事。
2012年に兵庫県尼崎市にて開業。2014年に法人化し、弁護士法人アルテの代表に就任。
交通事故の解決実績多数。脳・脊髄損傷等による重度後遺障害案件を多く取り扱っている。交通事故の被害者救済のため、医療機関等との連携を強化。事故直後より、後遺障害等級の認定、適正な賠償金の獲得まで、ワンストップでサポートしている。