政府保障事業の保障金請求方法は?無保険、ひき逃げの交通事故の被害者救済制度

もし、無保険事故、ひき逃げ事故に遭った場合、どうすればいいのでしょうか。

例えば、交通事故でひき逃げに遭い、加害運転者が逃走して不明の場合、又は交通事故の加害車両に自賠責保険の契約が締結されていなかった場合などです。

このような場合、政府の保障事業を検討するといいでしょう。

政府の保障事業とは、自動車損害賠償保障法(自賠法)に基づいて、自賠責保険又は自賠責共済による救済の対象にならない「ひき逃げ事故」や「無保険事故」の被害者に対して、健康保険又は労災保険などの他の社会保険の給付や加害者(損害賠償責任者)からの支払いなどによってもなお損害が残る場合に、政府(国土交通省)が加害者に代わって損害相当額を立替払いする制度です。

以下、保障金の請求手続を説明致します。

保障金の請求手続

被害者が政府保障事業から損害の填補を受けようとする場合には、保障事業を委託されている保険会社又は共済組合の窓口に備えつけられている「自動車損害賠償保障事業への損害填補請求書」に必要事項を記載し、必要書類を添付して請求をします。

必要書類は、自賠責保険等へ損害賠償額の請求をする際の必要書類と同様です(交通事故証明、診断書、休業損害証明書、後遺障害診断書など)。

詳細は、ご確認下さい。

請求権者

傷害、後遺障害の場合は、被害者または被害者から委任を受けた方。

※被害者が請求時点で未成年の場合、親権者(父母等)が請求者になります。

※病院等からの治療費のみの請求は認められていません。

死亡の場合は、法定相続人および慰謝料請求権者(被害者の配偶者、子、および父母)。

※法定相続人および慰謝料請求権者が複数人いる場合は、原則として、そのうちのひとりが代表して請求者になり、その他の方は代表者に請求を委任していただくことになります。

請求窓口

請求は、全国の損害保険会社、農協等の窓口で受け付けています。

必要書類

自動車損害賠償保障事業への損害のてん補請求書

振込依頼書

委任状(保障事業所定の様式)

請求者本人の印鑑登録証明書

交通事故証明書

事故発生状況報告書

診断書

診療報酬明細書

通院交通費明細書

休業損害証明書

など

詳しくは請求窓口でご確認ください。

手続きの流れ

手続きの流れは、以下です。

1 相談

請求に関する不明点、請求関係書類、請求手続き等の詳しい内容、請求関係書類の提出については、損害保険会社(組合)の窓口にご相談下さい。

2 請求関係書類の準備

必要な請求関係書類を準備して下さい。事故の状況や書類の内容をご確認下さい。

3 請求関係書類を提出

請求関係書類一式を損害保険会社(組合)の窓口に提出して下さい。

4 受付

損害保険会社(組合)。請求者へ問い合わせや不足書類の提出のお願い等をする場合があります。

5 損害調査

損害保険料率算出機構。提出された請求関係書類をもとに損害保険料率算出機構にて、事故状況の調査と損害額(治療費など)の調査を行います。

6 審査・決定

調査結果と調査書類が国土交通省へ送付され、関係先への最終確認・調査の上、支払金額が審査・決定されます。

7 お支払い

損害保険会社(組合)。決定内容を請求者へ通知し、支払いが行われます。

保障金が支払われるまでの期間

請求事案の事故状況や刑事手続き状況によって、処理期間が長期に及ぶものもありますが、平均処理期間としてはひき逃げ事故が約4か月、無保険事故は約7か月前後という状況のようです。

保障金請求権の時効

政府保障事業に対する被害者の保障金請求権は、3年で時効により消滅します(自賠法75条)。

時効の起算日については、傷害に関する損害は事故日から、後遺障害に関する損害については症状固定時から、死亡事故の場合は死亡時からとして運用されています。

自賠責保険金等の被害者請求権の時効と同様です。

症状固定とは、症状が安定し、医学上一般に認められた医療を行ってもその医療効果が期待できなくなった状態をいいます。

保障金支払に関する不服がある場合

てん補金額(後遺障害等級)など、政府保障事業の決定に対して異議がある場合には、国土交通大臣に対して「異議申立の手続き」を行うことができます。

「異議申立の手続き」は、事故発生日(後遺障害は症状固定日、死亡は亡くなられた日)から3年以内に行ってください。

事故発生日から3年を経過している場合は、てん補決定の翌日から6か月以内に裁判上の請求を行ってください。

この記事を書いた人:弁護士法人アルテ代表 弁護士 中西優一郎

東京大学法学部卒業。東京の外資系法律事務所に勤務し、渉外弁護士として、労働、コーポレート/M&A、ファイナンス等の企業法務に従事。
2012年に兵庫県尼崎市にて開業。2014年に法人化し、弁護士法人アルテの代表に就任。
交通事故の解決実績多数。脳・脊髄損傷等による重度後遺障害案件を多く取り扱っている。交通事故の被害者救済のため、医療機関等との連携を強化。事故直後より、後遺障害等級の認定、適正な賠償金の獲得まで、ワンストップでサポートしている。

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