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記憶障害
1 症状の内容
記憶障害は高次脳機能障害においても、最も多く見られる症状です。
記憶は、①記銘→②保持→③想起の3段階に分けられます。
まず、①記銘とは、新しい情報をとりいれること、そして、②保持とは、情報を貯蔵しておくこと、③想起とは貯蔵した記憶を取り出すことをいいます。
記憶障害は、各段階のいずれかに障害が発生し、新しいことを覚えて、思い出すという一連の流れが阻害されるものを言います。その他の記憶障害については、いろいろと分類があります。
①前向健忘と逆向健忘
前向健忘とは、事故の前と後に時間軸を設定し、発症以後のことを忘れる、覚えられない症状をいいます。逆向健忘は、逆に事故以前、発症以前のことを忘れてしまうことを言います。
②記憶の質的分類
まず、陳述記憶と非陳述記憶に分けられます。
陳述記憶には、エピソード記憶(自分が体験した事柄に関する記憶)と意味記憶(終戦記念日はいつか、など)があります。
非陳述記憶には、自転車をこぐといった技能、パソコンのスイッチを入れて使用するなどの、意識せずにできる記憶をいいます。
③作動記憶(ワーキングメモリ)
作動記憶(ワーキングメモリ)とは、ある目的のために、必要な情報を一時的に記憶しておく記憶のことを言います。例えば、ネット通販で何かほしいものがあったときに、目的物にたどり着くためには、検索欄に言葉を入れる必要があります。その言葉を一時的に覚えて、検索するような場合です。
あるいは、電話をかけるときに、メモを見て、一瞬だけ電話番号を覚えて、ボタンをプッシュするというような場合です。人と会話をしていても、多少話がそれても、ワーキングメモリがあるために、何の話だったか忘れずに元の話に戻ることができますが、ワーキングメモリに障害があると話がどんどん別の方向にそれて行ってしまうことがあります。
④展望記憶の障害
展望記憶とは、明後日の9時に病院に行くというような未来の自分の行動についての記憶をいいます。
展望記憶に障害があると、同じスケジュールについて、何度も何度も聞いたりします。
⑤作話
実際に体験していない出来事を誤って追想する現象をいいます。精神疾患による妄想とは異なります。自分の記憶の欠損やそれによる当惑を埋めるためになされます。
⑥メタ記憶
メタ記憶とは、自分の記憶能力についての認識や知識をいいます。高次脳機能障害の場合は、病識に欠ける場合が多く、メタ記憶に障害がある場合が多いと言えます。
2 症状例
・現実に起きていないことを作り話してしまう。
・毎回のように、ものをどこにおいたのかわからず、探し回る。
・今さっき自分で言ったこと、言われたことを忘れてしまう。
・携帯電話や鍵をどこにおいたのか忘れてしまう。
・次に病院に行く日にちを何度も何度も繰り返して聞く。
・気に入った話を何十回でも繰り返して、あたかも初めてする話のようにする。
3 家族の対応方法
メモ、携帯電話、カメラ、スケジュール帳などの外部の記憶媒体に記録することを習慣づけさせる。何かをしたら携帯電話のカメラで撮っておくだけでも、自分が買ったものは何か、いくらお金を使ったかなどの確認を自分で後から行うことができる。
障害により、疲労しやすくなっている(易疲労性)ので、過密なスケジュールを組まない、休息を十分にとりつつ、規則正しい生活が送れるようにする。間違った情報を記憶してしまうと修正が困難なので、正確な情報を覚えるようにさせる。
スケジュール帳などで、常時確認することを習慣づけさせる。
文字だけでなく、絵や写真を使って、様々な角度からの情報を与える。
間違いを繰り返し指摘されることは本人にはストレスになる。間違った情報に触れさせないことも大切。
4 必要な検査
ウエクスラー記憶検査(WMS-R)
リバーミード行動記憶検査(RBMT)
三宅式記銘力検査
ベントン視覚記銘検査